婚約者には愛する人ができたようです。捨てられた私を救ってくれたのはこのメガネでした。
「ディア。空間転移を使ったことは?」

「ありません。使う必要がなかったので」

「じゃ、ボクに掴まって。しっかりと掴まってね」
 エメレンスはリューディアを抱き寄せ、その腰に手を回す。彼女を離すまいとしっかりと。リューディアも彼の話を聞いていたのか、ぎゅっとエメレンスの背中に腕を回した。
 生温い空気が肌に触れた感覚があった。瞬間、視界が一変する。
 先ほどまで、官舎の近くだったのに、今はクズ石置き場。リューディアは目を瞬いた。
「ディア、気分が悪いとかは無い?」

「大丈夫です……。あ、あそこ」

 リューディアはクズ石置き場でしゃがみ込んでそのクズ石を手にしている一人の男を見つけた。

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