婚約者には愛する人ができたようです。捨てられた私を救ってくれたのはこのメガネでした。
 きちんと国王から話を聞かねばならないと思った矢先、真っ青な顔をした国王の使いが飛ぶようにしてやって来たのだ。
 その結果、現在に至る。

「モーゼフ殿下のお望みをそのまま受け入れます。それで、よろしいですよね?」
 コンラット公爵のこの言葉には、有無を言わせぬ重みがあった。
 国王としてはコンラット家との繋がりと持っておきたいところ。そのため、二人を婚約させたのだが。
「リューディアがモーゼフ殿下と婚約してそろそろ十八年。十八年もそのような状況であれば、お互い、何かしら惹かれる部分があるのだろうと思っておりました。ですが、残念ながらそうならなかった。挙句、殿下はリューディアとの婚約解消を望んでいる。そんな二人が結婚をして、幸せになるとお思いですか? 国のためにと決めた婚約ではありますが、できれば娘には幸せになってもらいたいという親心くらい、私にだってあります」

 それを言うならば、国王だって息子であるモーゼフには幸せになってもらいたい。自分たちのように、いつかは二人で愛を育んでもらえたら、と思っていた。リューディアは控えめで自分の立場をわきまえている聡明な女性だ。普段は眼鏡をかけて生活をしているようだが、その眼鏡姿からは知的さを感じる。
 リューディアは王太子妃教育も受けていた。それはモーゼフが二十歳の誕生日に立太子することが決まっていたからで、その後、二人は結婚する予定であったからだ。
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