婚約者には愛する人ができたようです。捨てられた私を救ってくれたのはこのメガネでした。
 そしてそのリューディアは王太子妃教育も熱心に受けていた。元々、勉強をすることが嫌いな彼女ではないらしい。だが、当の本人が引きこもりであるため、家庭教師をこのコンラット公爵家に派遣していた。家庭教師からあがってくる報告の内容も、引きこもりという点を除けば、素晴らしいものだった。
 リューディアに高まる周囲からの期待。だが、残念ながら息子であるモーゼフの方はそうではなかったらしい。十八年という期間を婚約という期間に費やしたにも関わらず、残念ながらリューディアとの間に愛は生まれなかった、ということだ。

「う、うむ。そうだな……。二人のことを考えれば、この婚約は無かったことにしたほうがいいのかもしれないなぁ……」
 国王も言い淀む。本音を言えば、二人の婚約を解消させたくない。せっかく強固となりつつあった王族と魔法公爵家の繋がり。さらに、リューディアが王族の子を産んだとなれば、その強大な魔力が王族にも引き継がれるだろうという期待。優秀な王太子妃。
 だが、二人の気持ちを考えれば自ずとと答えは見えてくる。国王だって鬼ではない。嫌がる者同士をくっつけて、まして双方がこの国の新しい未来を作り上げていく者たちだとしたら。

「二人のためにも、モーゼフとリューディア嬢の婚約は、解消させよう……。その、まあ、あれ、だ。リューディア嬢の結婚に関しては、今後とも悪いようにはしない。いい縁談があったら、取り持ちたい。そう、思っている」

「陛下の英断に感謝申し上げます」

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