婚約者には愛する人ができたようです。捨てられた私を救ってくれたのはこのメガネでした。
そこで組んでいた足を戻したモーゼフは、紅茶に手を伸ばして、それを二口飲んだ。
「まあ、いい。幼い頃から親によって勝手に決められた婚約だ。これを機に考えなおしてもらおうと思ってだな。これから一生、君の辛気臭い顔を見て暮らすだなんて、私には耐えられない。私にだって、好きな女性と生涯を共にする権利があると思わないかい?」
好きな女性、という言葉が彼から出てくることが意外だった。
「はい、そうですね。殿下には思いを寄せている女性がいらっしゃるのですか?」
よくぞ聞いてくれました、と言わんばかりの笑顔をモーゼフは浮かべた。緑色の瞳が嬉しそうに揺れている。目が隠れるくらいの長ったらしい紺色の前髪をわざとらしくかき上げた。
「そうだ。私は運命の出会いを果たした。彼女を一目見た瞬間、私の全身が痺れたのだ。君と初めて出会ったときは、動悸が酷くて嫌な思いをしたというのに。たが、今回は違う。彼女から目が離せない、そんな気持ちだ」
興奮しているのか、いささか頬も赤く染まり始めている。
「そう、でしたか……。殿下が素敵な女性と巡り会うことができて、何よりです」
「そうか。君ならわかってくれると思っていたよ。婚約解消に必要な書類は、後日、コンラット家の屋敷に届ける」
「承知しました」
リューディアは事務的に深く頭を下げる。
「まあ、いい。幼い頃から親によって勝手に決められた婚約だ。これを機に考えなおしてもらおうと思ってだな。これから一生、君の辛気臭い顔を見て暮らすだなんて、私には耐えられない。私にだって、好きな女性と生涯を共にする権利があると思わないかい?」
好きな女性、という言葉が彼から出てくることが意外だった。
「はい、そうですね。殿下には思いを寄せている女性がいらっしゃるのですか?」
よくぞ聞いてくれました、と言わんばかりの笑顔をモーゼフは浮かべた。緑色の瞳が嬉しそうに揺れている。目が隠れるくらいの長ったらしい紺色の前髪をわざとらしくかき上げた。
「そうだ。私は運命の出会いを果たした。彼女を一目見た瞬間、私の全身が痺れたのだ。君と初めて出会ったときは、動悸が酷くて嫌な思いをしたというのに。たが、今回は違う。彼女から目が離せない、そんな気持ちだ」
興奮しているのか、いささか頬も赤く染まり始めている。
「そう、でしたか……。殿下が素敵な女性と巡り会うことができて、何よりです」
「そうか。君ならわかってくれると思っていたよ。婚約解消に必要な書類は、後日、コンラット家の屋敷に届ける」
「承知しました」
リューディアは事務的に深く頭を下げる。