婚約者には愛する人ができたようです。捨てられた私を救ってくれたのはこのメガネでした。
 リューディアは気付いた。ヘイデンに向かって「隊長」と声をかけてくるのは採掘師で、「部隊長」と声をかけてくるのが魔導士。それでも兄がこんなに慕われていることが、どこか嬉しさが込み上げてくる。そしてヘイデンに声をかけてくるような彼らはすぐさま見慣れないリューディアに気付くのだ。

「イルメリさんの妹さん?」
「明日から現場に?」
「うわ、妹さんもべっぴんさんだ」

 と声をかけられるものの、リューディアは下を向いて頷くことしかできない。

 そこへやっと、食後のデザートが運ばれてきた。
「はいよ、サービスだ。かみさんが五月蠅いから、仕方なくサービスだ」
 ヘイデンとイルメリの前には紅茶が、リューディアと二人の子供たちの前にはアイスクリームが並べられる。驚いてリューディアがガイルを見上げれば。
「娘と同い年と聞いちまったからな。俺にとっては子供みたいなもんだ。なんだ、お茶の方がよかったのか?」
「いえ。アイスクリームが食べたかったので嬉しいです」
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