2度目の人生で世界を救おうとする話。後編
2.聖家での穏やかな日常
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「紅ー!こっちだよー!」
「ここまでおいでー!」
秋晴れの空の下、妖の子どもたちが私の様子を伺いながらも楽しそうに聖家の側にある山の中を駆け回る。
「待て待てー!」
私はそんな子どもたちを笑顔で追いかけ、共に山の奥へと進んでいった。
本気を出せば子どもたちに追いつくことは簡単だ。
だが、それでは面白くない。
だから私は子どもたちが楽しいと思える速度でずっと子どもたちを追いかけていた。
「そっちには行かせないよ!」
少し子どもたちと距離ができたところで子どもたちの行方を阻むように弱い炎をボウ!と出す。
すると子どもたちはそれを見て「きゃー!」「わー!」「行き止まりだー!」とそれぞれが楽しそうに声を上げ今度は私の方へと走り出した。
子どもたちが私の能力を見ても怖がらないのはその能力が自分たちを傷つけるものではないとわかっているからだ。
2ヶ月前、朱に囚われた時に付けられてしまった能力制御装置も、龍があそこから脱出したと同時に壊してくれたおかげでもうない。
今の私は問題なく普通に能力を使える状況だ。
「紅ー!」
「え!?」
私の方へ楽しそうな笑顔で走ってきた子どもたちは全員で10人前後。
その子たちが全員、私に飛び付こうとしている状況に思わず私は目を見開く。
しかもその中には私より全然大きい雷までいる。
「ぜ、全員は無理…って」
何とか子どもたちを止めようとした私だったが、それは叶わなかった。
「どわっ!?」
私に飛びついてきた子どもたちを受け止められる訳もなく、私はそのまま子どもたちと一緒に後ろへと倒れる。
そしてどしーんっと勢いよくそのまま地面へと体をぶつけた。
普通にとても痛い。
「あははは!僕たちの勝ちぃ」
「やったね!」
そんな私を見て子どもたちは愉快そうに笑う。
え、どんな勝負をしていたの?
相手を派手に転ばせた方が勝ち、とか?
「お姉ちゃん、痛い?」
子どもたちの様子に苦笑いを浮かべているとその中から見た目だけ色男、雷が心配そうに私を見つめた。