2度目の人生で世界を救おうとする話。後編
くだらないことで喧嘩しているな。
そう思ったが止める気にはならず、私は2人の喧嘩を見ながらも朝食に手をつけ始めた。
早く食べないと時間がなくなる。
「…生意気な後輩だね」
「うるさい先輩ですね」
終わりの見えない2人の喧嘩。
もう少し続けるようなら止めようかな、と思っていると、私ではない人物によって2人の喧嘩は止められた。
「あ、蒼くぅん!紅ちゃん、朱くんも!」
お盆を持ってニコニコと笑っている姫巫女がこちらに声をかけてきたからだ。
姫巫女の後ろには同じくお盆を持っている武がいる。
「みんなおはよう!」
「「「おはようございます」」」
朝から元気いっぱいな姫巫女に私たち3人は礼儀正しく一礼する。
それから後ろにいた武にもいつものように挨拶をした。
その流れのまま蒼の隣に姫巫女が、姫巫女の隣に武が座る。
「朝の護衛は蒼くんじゃなかったからちょっと寂しかったんだよね。あ!武くんが嫌って訳じゃないんだよ!ただ、蒼くんに会いたくて…」
嬉しそうな表情から申し訳なさそうな表情へ。
そして最後には頬を赤く染めて照れ笑い。
この短い間にものすごい勢いで表情がコロコロ変わる姫巫女は朝から忙しそうだ。
先ほどまで蒼と朱のいろいろな意味の込められた笑顔しか見ていなかったから余計だ。
「喜んでいただけて嬉しいです」
「今日は深夜に来てくれるのかな?私、寝ずに待つね」
「…いえ、姫巫女様の健康の為にも僕なんて待たずに早く寝てください」
「うんん。待つよ。だっていつも頑張っている蒼くんにお帰りなさいって言いたいんだもん」
感情を読ませない王子様スマイルの蒼に姫巫女が優しく微笑んでいる。
まるで女神様のような慈悲深さを見せているが、蒼はどこか迷惑そうだ。
1度目の蒼なら「1日の終わりにアナタに会えるなんて幸せだね、僕は」くらい甘ーい言葉を言いそうなのに今の蒼は言わない。
もう大分こんな蒼にも慣れてきたが、たまにふと前の蒼を思い出してしまう。
「紅」
「ん?」
姫巫女と蒼の会話を聞きながらも朝食を食べ続けていると武が私に話しかけてきた。
「今日の任務場所近かったよな?一緒に行くから先に行くなよ」
「あ、そうだっけ」
「そうだよ」
「わかった。武のこと待ってる」
「おう」
「ずるい」
武と何気なく今日の任務の話をしていると私の隣から朱の不満そうな声が聞こえて来た。
朱の方を見ると朱が可愛らしく頬を膨らましてこちらを見ている。
か、可愛い!
可愛らしい朱にときめいている私とは対照的に武は「うげっ、何かわいこぶっているんだよ」と眉をひそめていた。
「僕も兄さんと一緒に任務に行きたい…」
「また任務先が近くだったら一緒に行こう」
「…うん。約束だよ」
「もちろん」
朱が可愛らしく上目遣いで私に小指を差し出して来たので、それに私の指を絡めてゆびきりげんまんをする。
「朝から俺は何を見させられているだ」
そんな私たちを武はげんなりとした顔で見ていた。