鳥籠公爵は二度目の初恋を逃がさない〜迷子のモフモフを見つけたら、公爵様に溺愛されました〜

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 院長室へ向かって歩いていると、書架の影から人影が飛びかかってきた。

 エリオットは、最小の動きでヒラリとそれを躱すと、気にせず先を急ぐ。

 しかし、ベシャリと床に崩れ落ちた男はめげることなく跳ね上がって、叫びながらエリオットの肩をグワシと掴み、グラグラと揺さぶってきた。

「院長、やっと帰ってきた! 遅いですよ、もう。あんた、院長なんですから、無断欠勤とかやめてください。というか、なんですか、その荷物。こんなに食べ物買い込んで、何してんですか。あ、もしかして、あんたの分も働いたけなげな俺へ、ごちそうでも作ってくれるんですか⁉︎ いやぁ、嬉しいなぁ。俺、院長の料理、好きなんすよねぇ」

 耳をふさぎたくなるくらい騒がしいこの男の名は、メナート・ロバン。

 リシュエル王国では珍しい、浅黒い肌に鮮やかなオレンジ色の髪。野生動物のような鋭い目は、金にも黄色にも見える。
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