鳥籠公爵は二度目の初恋を逃がさない〜迷子のモフモフを見つけたら、公爵様に溺愛されました〜
 口を開かなければ、獅子のような雄々しさを持つ男。それが、メナートだ。

 とはいえ、エリオットの前ではただひたすらにうるさい男なのだけれど。

 メナートは、エリオットの部下にして、ヴォラティル魔導書院の副院長をつとめる男だ。

 やる気のないエリオットを監視し、時に尻を蹴っ飛ばし、なんとか仕事をさせている苦労人でもある。

 ゆさゆさがさがさ、メナートが肩を掴んで揺らすたびに持っていた袋が揺れる。

 袋の持ち手が腕に食い込んで、エリオットは顔をしかめた。

「うるさい」

 エリオットは手っ取り早くメナートの口をふさぐために、持っていた荷物を彼に押し付けた。

 ひとしきり騒いでからでないと、メナートという男は静かにならないことを、エリオットは嫌というほど知っている。だからこそ、黙らせるにはそうするしかなかったのだ。
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