天敵弁護士は臆病なかりそめ妻を愛し尽くす
 これはあくまでもお互いのメリットのための結婚、契約結婚だ。

「これでお互いメリットだらけだな。っていうか、純菜の方が得なのに、何でお前が渋るんだ?」

 言われてみればそうかもしれない。

 壱生は女性の災難から逃れることができるし、純菜は彼にトラブル解決の謝礼の代わりと結婚することで両親を安心させることができる。

「それとこれとは別です。頭ではわかっていても気持ちの問題ですから」

「その気持ちだっていつか変わるかもしれないだろ。まあ悪いようにはしないから」

 壱生が笑みを浮かべて純菜に手を差し出した。

 純菜はもう逃げられないのだと覚悟して、その手を握った。

 え……待って。なんかデジャヴ。

 そのとき走馬灯のように頭の中に浮かんだのは、壱生のアシスタントになった時の光景だ。

 私あのとき握手したこと、その後すごく後悔したんだった。って……また今回も!?

 純菜は一抹の不安を感じながらも壱生の笑顔に苦笑いで返した。

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