禁断溺愛〜政略花嫁は悪魔に純潔を甘く奪われ愛を宿す〜
第二章 許されざる禁断の恋心
翌日の正午頃、東藤の男性秘書がやって来た。

「東藤社長から奥様へ言付けです。『今夜はホームパーティーをするから、料理を男性ひとり分多く作っておけ』とのことです」
「わかりました」

奥様、なんて恭しく呼びかけられているが、格下の人質を蔑む視線は隠せていない。それもそうだろう。この男性秘書こそ、家族に銃口を向けていたひとりだった。
開始時間や料理の注文を伝えると、バタンと重たい玄関ドアが閉まる。

「ホームパーティーかぁ」

賑やかで楽しそうな響きだ。でも、きっと東藤が自宅に呼ぶほどの人物であるから、なにか裏社会にとって重要な人物か、東藤の利益になる人物に違いない。
私は夫の逆鱗に触れぬよう掃除を神経質なまでに行い、細心の注意を払って夕食を作ることにした。

そして、時計が二十時を回った頃。鍵が開く音を聞きつけ、料理を並べている手を止めて、リビングルームから玄関へ急ぐ。
泣いても笑っても始まる、黒くて物騒なパーティーの時間だ。夫の命令通り、妻らしく振舞わなければならない。
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