禁断溺愛〜政略花嫁は悪魔に純潔を甘く奪われ愛を宿す〜
昨日の雰囲気からして、九條さんも秘密がありそうな人物だとは感じるけれど、絶対に悪い人じゃない気がしている。初対面の時の雰囲気、それからふとした時に見せる誠実な視線が、彼の本質のように思えるのだ。

家事をした後、夕食を二人分作っていく。東藤が帰ってこないのなら、あのレシピ本通りに作らなくてもいいかもしれない。

「それなら、今日は具沢山の豚汁にしたいなぁ」

野菜をいっぱい入れよう。サラダには特製タルタルソースを乗せて、メインは母さん直伝豚カツにした。デザートはみずみずしいフルーツを用意する。
この一ヶ月でどんどん食が細くなってきていたが、家族団欒の食卓に並んでいた料理を作ると、不思議と食欲が湧いてくる。

「あっ。そういえば何時に持って行けばいいのか聞いてなかった」

時刻は十九時。夕飯にはちょうど良い頃合いだが、九條さんは帰宅しただろうか?
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