禁断溺愛〜政略花嫁は悪魔に純潔を甘く奪われ愛を宿す〜
第三章 抑えきれない劣情
俺が蒼井清華という存在を知ったのは、今から約二年前。
警察庁警備局警備企画課、いわゆる公安の潜入捜査官として関東最大の犯罪組織『盈水會』に入り、それから三年が経過した時だった。

九條国際貿易の代表取締役として出席したパーティー。そこで彼女は高齢の祖父の付き添いとして参加しており、白百合のごとき存在感を放っていた。

長い睫毛に彩られた二重瞼と黒目がちの大きな瞳、奪いたくなるほど形の良い赤く艶やかな唇。
対照的に、栗色の髪に施された複雑な編み込みは聖女像のようにきっちりとしていて、晒された白磁のうなじが胸の内の禁忌感を煽る。

光の中を歩く人々のために、暗闇に浸かるのにも慣れてしまった悪魔のような俺とは正反対の彼女に――俺は、ひっそりと静かに目を奪われていた。

彼女の仕草はすべて祖父への家族愛に満ちていて、招待客は「可愛いお孫さんですね」と顔を綻ばせている。
気配りが上手で、つまらなそうにしている子供を見つけると、明るく話しかけていた。その子供に、つい、寂しかった幼少期の自分を重ねてしまう。
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