夜を越える熱
間違いなかった。

そして今井の方も藍香に気づいていたと思う。



今井の後ろ姿は部長室をノックすると中へ消えた。



驚きのあまり言葉を失っている藍香と高松の前に、今井はすぐに部長室から出てきた。


「今、良いそうです。お入りください」



丁寧な言葉遣い。


一部の隙もない綺麗な所作。だが出てきて扉の横に立った今井は変わらず藍香の方を見ている。



「ありがとうございます」


高松の声が聞こえる。



まるで接客でも受けているかのような案内。



沈黙したままの今井の聡明な視線が、部長室へと入っていく藍香のたちの方をじっと見ている。──それはひどく緊張する瞬間だった。















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