夜を越える熱
報告の約束
長時間の会議だったらしい。

「会議に出ていらっしゃったんですね。お疲れ様でした」


部長室について入ると、藍香は藤崎の後ろ姿に遠慮がちに声をかけた。



「会議は基本30分、長くても1時間以内に収めるようにといつも言っているんだけれどね。……主催者の段取りがあまり良くないんだ」



藤崎は自分のデスクの重厚な椅子に腰掛けると、息をついて若干疲れたように前髪をかき上げた。


何気ないその仕草に妙に大人の男性の色気を感じてしまい、藍香は落ち着かなげに目を逸らした。


「で、……どうしたんだ?」

「はい、昼間の件ですが。担当者としてミスを無くすことはもちろんですが、他にもいくつかあると感じるシステムの問題点をリストアップして来ました。これは日々業務を行う私でないと気づきにくいかと思いましたので、ご参考までに」


緊張しながら作成した資料を藤崎に手渡した。

脚を組みながらざっとそれらを読み通した後、藤崎と視線が交差する。さっきまでの気だるげな表情とは別人のように変わった視線に藍香の心臓が跳ねた。




「そう。ただ謝るだけかと思っていたし、正直、(いち)担当者に期待もしていなかったから昼間は黙ってた。でもきみにこれが出来るなら、私のところに持参するだけでなく、やるべきことがあるね。……分かるか?」


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