夜を越える熱
その日の夕方からは会議があった。

新規参入事業に関する関係者会議。それに藤崎部長も出席している。



定時もとっくに過ぎそろそろ終わる頃だと思われるが、どうも長引いているらしい。恭佑はその会議が終わるのを待ちながらデスクにいた。


会議には課長以上でないと参加出来ないが、その事業に関わる業務を恭佑も担っているので会議結果を把握しておく必要がある。それに会議が終わると『この内容についてどう思うか』と恭佑の意見を聞かれるのだ。



今日は一日中釈然としない気分だった。原因は何となく分かっている。



相談に乗ってくれと言われて恭佑が断った時の、あの瞳のせいだろう。






「今井。会議やっと終わったみたいだぞ」


我に返ると目の前の同僚の吉沢が、会話をしながら事務室に戻ってきた課長二人と部長の姿を示した。


「ああ」

恭佑が立ち上がろうとすると。


「でもなんか先客がいるみたいだな。部長室の前に誰かいるぞ」


吉沢の言葉通り、部長室の横にいた人影は、戻ってきた藤崎部長と何か話をすると部長について部屋の中へと消えて行く。


さらりと揺れる長い栗色の髪が見えた気がした。

















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