観測の牢獄
(17)
私の前の家、つまりは前のお父さんがいる酒蔵に向かっていると知って、少なからず動揺した。
「お父さんにお別れの言葉でも言ってこいっていうんですか?」
「バカ言うなよ。死ぬ人間が生者にお別れなんか言ってどうする。
君のお父さんはむしろ『完璧な自殺』にあたっての障害だ。
君が死んでも、お父さんはこの世界で君の存在を覚え続けているだろうからね。
それでは、君は完璧にこの世界から消えたことにならない」
「じゃあ、どうするんですか?」
「まあ、一番簡単なのは、殺してしまうことだろうね」
「バカな」
「ああ、今日はそこまでやらないよ。
敵情視察に留める。
さて、君のお父さんはどれだけ君を覚えているのかってね」
「お父さんにお別れの言葉でも言ってこいっていうんですか?」
「バカ言うなよ。死ぬ人間が生者にお別れなんか言ってどうする。
君のお父さんはむしろ『完璧な自殺』にあたっての障害だ。
君が死んでも、お父さんはこの世界で君の存在を覚え続けているだろうからね。
それでは、君は完璧にこの世界から消えたことにならない」
「じゃあ、どうするんですか?」
「まあ、一番簡単なのは、殺してしまうことだろうね」
「バカな」
「ああ、今日はそこまでやらないよ。
敵情視察に留める。
さて、君のお父さんはどれだけ君を覚えているのかってね」