男達が彼女を離さない理由
出会いと始まり
 ふと会いたくなる女が居る。
 もう10年の付き合いになる。
 若い頃から俺には結婚願望が皆無。独身生活を謳歌している。異性との付き合いに制限は無いし出会いもそこそこあるので、不自由は感じていない。緊張を強いられない生活をあまりにも長く送って来たがために、自分自身どこまで脱力系なんだよっ、と笑えてくる。
 
 彼女との出会いのきっかけとなったのは俺がよく行くカフェ。たまに彼女をみかけることがあった。美人なわけではないし、スタイルが良いわけでもおしゃれでもない。目立った特徴も無い。だが、気になっていた。
 みかけるだけでお互いが常連客であることだけはわかって来た頃、店が混んでいた或る日、入口で彼女と出くわした。俺達以外に席待ちの客は居なかった。
「混んでますね。待つことになりますね」
 と俺。
「そう、ですね。次だからもうじき通されると思うんですけどね」
と彼女。
 先に待っていたのは彼女の方だ。だから、次に通されるのは彼女で、俺はその後になる。
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