男達が彼女を離さない理由
 暫くすると2人用の席が空いた。店員は彼女に向ってこちらへどうぞと言った。その時彼女は俺のほうを向き、宜しかったらご一緒しませんかと言った。ドキっとした。願ったり叶ったりだ。驚いた顔のまま、俺は「ハイ!」と返事をして彼女について行った。
 いつもは2人用の席に独りで座っている2人が、初めて2人用の席に2人で座る。2人で座るとこのテーブルは狭い。どうせコーヒーしか頼まないから、ソーサーが2枚載れば充分だ。が、そうだ、相席してもらったお礼に彼女にケーキをご馳走しよう。
 彼女に一切相談せず、俺はチーズケーキを2つ買って席に戻った。
「お礼です。どうぞ」
 と言って彼女の前にケーキが載った皿を置いた。テーブルは更に狭くなった。
「えっ、なんのお礼ですか?」
 と彼女が疑問に思うのは当然だな。
「お詫び、でもあるかな。お邪魔してすみません」
「お気遣いありがとうございます。遠慮なく戴きます」
 礼儀正しく背筋を伸ばしてお礼を言う彼女。
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