男達が彼女を離さない理由
居心地
 俺が所有する不動産の書類手続きがあるため、期末期初は忙しい。カフェに立ち寄ること無くほぼ1ヶ月が過ぎた。俺が居ない間、彼女はどうしていたろう、また別の男とカフェに行ってるんだろうな、と切ない気持を抱えていた。そう言えばそろそろ彼女を意識し始めた季節が巡って来る。1年経つのか。この1年のうちに8人目の男にはしてもらえたが、全く何の進展も無い。
 あのカフェで彼女と会話をすることが俺の生活に必要不可欠となっている。もっと会っていたい、もっと近付きたい、もっと彼女のことを知りたい。何しろ名前さえ知らないのだから。
 8人目の男は名無しのゴンベエかよ。

 ある雨の夜、今夜も寂しく独りでカフェで夕食か、と思いながら店に入ると、彼女が居た。独りではない。男が一緒だ。しかも外国人。外国人の年齢は見た目では判断出来ないが、彼女よりは上に見える。青い目のがっちりした欧米人。英語で話す声が聞こえる。
 俺は留学していたので英語がわかる。彼女にはSNSのハンドルネームの由来を伝えた時にそれを話したから、聞かれたくない内容でもわかっちゃうぞ。
< 20 / 44 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop