男達が彼女を離さない理由
「こちらでよくお見掛けしてました」
 と言う俺に、彼女は「私も」と言って笑った。笑うと目が無くなる。
 その日は名前も訊かず、素性を語らず、2人とも1時間程で店を出た。
「ご馳走様でした」
 と言う彼女。これからもきっとこんな風に会うだろうと思いはしたが、この縁を逃したくないという気持ちが込み上げて、
「またお会いしましょう」
 と言ってみた。彼女が、
「はい、是非」
 と言ったので、嬉しくて飛び上がりそうになった。
 それから度々彼女と相席する機会を得た。
 2回目は俺が先に席に着いていたので、彼女が入店したのが見えた時に、手を挙げて手招きした。3回目は彼女が先に席に着いていた。俺がやったように手招きしてくれた。名前はまだ訊いていないので手招きするだけの日が続いた。勿論会えない日もあった。
 3ヶ月経った頃には相席が当然のようになっていて、手招きすることなくともお互いの前の椅子に座るようになった。
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