男達が彼女を離さない理由
男6
 彼女の前に座っているあの男、どこかで見たことがある。俺はテレビを観ないので、俳優等の芸能人ではないと思う。だとしたら最近読んだ雑誌? どこで何を読んだっけな。図書館は行ってないし、本屋で立ち読みもしない。他に書物を手にするところってどこだ? あ、床屋だ。そうそう先月行った床屋で読んだ雑誌の表紙に載ってた顔だ! えーっと、なんてったっけな、有名人であることは間違い無いし、作品にも馴染みがあるのに。ど忘れ。
 そうだ、思い出した。小説家だ。有名な小説家ではあるけれど、小説のジャンルが社会派なので、このカフェに来る客の客層には馴染みが無いかもしれない。誰も気付いていないようだ。
 さて、どうしたもんか、家に戻ってその作家が書いた本を持って来るか。そして裏表紙にサインしてもらう? うーむ、プライベートだろうからそれは失礼か。後で彼女に本を渡してサインして貰うよう頼んでみるか。ちょっとミーハーだな。やめよう。
 その小説家も彼女のボーイフレンドの1人なのだろうか。交際範囲広いなー、ほんとに。
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