線香花火の初恋【短編】
2 目は口ほどに物を言う side岸田

あの目はずるい。

気づいたのは高校2年の時だ。
ふと、視線があった。たまたま授業で当てられ、クラスの前で発表したときだった。

花本若菜。
射貫いてくるかのように真っ直ぐに、熱をもった視線を向けてこられたのだ。授業を受けるような目線でないことは恋愛経験も乏しい俺でもわかる。頬はほんのりピンクで。その目線は通常なのか、と疑ってもそうではなかった。俺にだけ。

その視線を意識したら一気に気になってしまうのは仕方ない。しかも改めてみるとなかなか好みの顔で、その大人しそうで初心な感じが男には人気があったのも、下衆い会話の中で聞いたことがある。気持ち悪いとかはなかった、ただむず痒いというかなんというか。あと優越感が少し。
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