ドSな天才外科医の最愛で身ごもって娶られました
 今はまだ心のブレーキは効いているけれど、この先もそうでいられる自信はない。

 でも、恋がしたい。

 失恋のひとつやふたつ、誰だって経験しているもの。

 私の場合は失恋の時期が前もってわかっているというだけだ。

 心の葛藤で、最後は憧れが勝った。

 どうせなら一生に一度の燃えるような恋をしよう。

 一年後に燃え尽きてしまえばいい……。



「そんな顔もするんだな」

 彼はからかうようにクスッと笑う。

 どんな顔だっていうんだろう。

 初めてだから、どうしたらいいかわからなくて。だけど初めてだなんて知られたくないから、あまり恥ずかしがらないようにした。

 でもやっぱり恥ずかしくて……。

 彼の方は案の定余裕の表情だ。

 悔しいから聞き返す代わりに、私も言った。

「自分だって」

 あなたはいつだって言葉少なでそっけない。

 冷たい人なのかなって思っていた。

< 102 / 273 >

この作品をシェア

pagetop