ドSな天才外科医の最愛で身ごもって娶られました
次の朝、食卓についたとき、父はすでにいなかった。
「さっき病院から電話があって」
「もう若くないんだから、もう少し人を使ったらいいのに」
「ええ。それはそうなんだけど……」
母は瞼を伏せて力なく微笑んだ。
どうせ言っても聞かないんだろう。なにもかも自分でやらないと気が済まない人だから。
母とふたりの朝食は静かだ。
もともと母はおっとりした穏やかな人だ。
俺の縁談については人が変わったように口を挟むが、それは息子を心配しているからだ。病院を経営する上で、父の苦労を近くで見ているだけに心配は尽きないんだろう。
「夕べはごめんなさいね。薫さんもすごく気にしていたわ」
「わかってくれればいいさ。それで用事があるって言っていたのは?」
まさか小池に会わせたかったわけではないだろうし。
「実はね。お父さん、あの調子で元気そうなんだけど、最近あんまり体調がよくないの」
「検査はしてるんだろう?」