ドＳな天才外科医の最愛で身ごもって娶られました
『申し訳ありません』

　すぐに対応はしたが、その後も今度はコーヒーが冷めているなど不満はおさまらなかった。結局私だけでなく上司も呼べと言う。

「完全に桜子を狙った嫌がらせでしょ」

　答える代わりにうなずいた。彼女たちは私だけが気に入らないのである。

「この前だって桜子はなにも悪くないのに」

　彼女たちと揉めるのは、これで二度目。

　一度目は先週。私がコーヒーを運んでいるときに彼女たちとぶつかった。咄嗟にトレイを自分の方に向けたおかげで、彼女たちにコーヒーはかからずに済んだ。

　その分自分は思いきりかかってしまったが、それで済んだのは幸いである。もし彼女たちが火傷でもしてしまったら大変だったから。

　彼女たちからぶつかってきたように感じたがそれをいっても始まらない。

　ただ『申し訳ありません』と謝るしかなかったが、スタッフのひとりが一部始終を見ていた。

　後になって『夕月さんは被害者だ。あの客は悪質だ』と状況をみんなに説明してくれたのである。

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