ドSな天才外科医の最愛で身ごもって娶られました
 桜子の前に移動してひざまずき、彼女のお腹に頬を寄せた。

「元気か? 坊ずたち。ママを困らせるなよ」

 双子はふたりとも男だとわかった。

 俺の肩に手をかけた桜子が「大丈夫よ、いい子だもんね」と笑う。

「さあ、座って」

 彼女のためにリクライニングチェアを買った。

 ソファーをずらして、右を見れば外に向くように置いてある。

 ふとかたわらにある籠が目に留まった。

 籠には毛糸が入っている。その隣には編み物の雑誌があり、表紙では赤ん坊がいい顔で笑っている。

「編み物か」

「うん。この子たちが生まれるのは冬だから、靴下とか編もうと思ってね」

 網掛けの白い靴下を手に取ると、それは冗談みたいに小さかった。

「かわいいでしょ」

「ああ。かわいいな」

「このリクライニングチェアすごく気持ちいの。ここに座って編み物をしているとね、いつのまにか寝ちゃうのよ。だから少しも進まなくって」

 くすくすと桜子が笑う。

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