ドSな天才外科医の最愛で身ごもって娶られました
 図星だったようで、彼は気まずそうに考え込む。

 どうすればいいか考えているんだろう。私のために。

「とっても助かってる。猫の手も借りたいもの」

 お世辞でも嘘でもない正直な思いだ。

 お母様は優しいだけじゃなく、私の意見を尊重してくれる。慎一郎さんが優斗を喜んで受け入れてくれたのと同じで、私は家族が増えてうれしい。

 だって今まで優斗とふたりきりだったんだもの。

「でも、ごめんね。病院まで遠いから通うの大変なのに」

 私はよくても、彼は病院が遠くなってしまう。

「それはいいんだ。行き帰りに眠れるように運転手を雇ったんだから」

 あ、嘘ついた。

 目を逸らすからわかる。

「運転手さんを待たせるのが嫌で、結局断ったんでしょう?」

「バレたか」

 悪びれもせずに笑った彼は「実は」とにじり寄ってきた。

「なあに?」

「四月から朝井総合病院に席を移すことが正式に決まった。青扇には非常勤として通う。この近くに引っ越しをしようと思うんだ」

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