ドSな天才外科医の最愛で身ごもって娶られました
「いれながらご説明しますね」

 早速キッチンに向かおうとすると「座ってて」と促された。

 え? それはどういう?

「もう君の仕事は終わったんだ。今からは君はお客様だよ。さあ座って」

 朝井様は柔らかい笑みを浮かべる。

「それでは、ありがたく失礼いたします」

 まだ病院の支払いの件を話していない。ちょうどいい機会だから話してみよう。朝井様はきっとお礼だと固辞されるに違いないが、貰うわけにはいかないもの。

 お礼なら、こんなふうにコーヒーを出してもらえるくらいでちょうどいい。

 思いを巡らせながら部屋を見回した。

 リビングには燦々と光が降り注ぎ、二月だというのに暖かい。腰を沈めたソファーは程よい弾力で、二度と立ち上がりたくないと思ってしまうほど座り心地がいい。

 テーブルは、ほかの家具と同じ素材の明るい色をした木だ。使うほどに馴染んでいきもうすこし落ち着いた色調になっていくという。

 その頃にはきっと朝井様にはご家族が増えているんだろうな。

< 73 / 273 >

この作品をシェア

pagetop