ドSな天才外科医の最愛で身ごもって娶られました
 準備しながら思った。もしかしたら彼は結婚を見据えてこの家用意したのではないだろうか。

 ひとりでは大きすぎるキングサイズのベッド。

 書斎のほかにも部屋はいくつかあり、ウォーキングクローゼットのほかに私が好きなように選んでみてほしいと言われて揃えた家具がある。

 ドレッサーこそ省いたけれど、今すぐにでも誰かが住めそうな部屋だ。

 なんとなく心がチクリと痛んだ。

 この家の準備で一緒にいる機会が増えたから、情が移ったのかな。

 つらつらと思いを巡らせていると、コーヒーの香りをまといながら朝井様がトレイにカップをふたつ乗せてリビングに来た。

「どうぞ」

「ありがとうございます」

「キッチンも使いやすそうだ」

「だといいのですが」

 コーヒーカップを手に取り、香りを楽しみながら口をつけたそのとき、向かいに座る朝井様が、身を乗り出した。

「おりいって君に頼みがある。今度はプライベートなことなんだが」

 なんだろう。

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