9度目の人生、聖女を辞めようと思うので敵国皇帝に抱かれます
人見知りの激しそうなカインが、気持ちよく入城できるよう、セシリアは笑顔を浮かべた。 

だが、馬車から降りてきたのは、あり得ない人物だったのである。

(え……? 嘘、なんで……)

サラサラの金色の髪に、グレーの瞳、均衡のとれた顔立ちに、スラリとした体躯。

金の紐ボタンが羅列した白のジュストコールが怖いほど似合うその人は、カインではなく、エンヤード王国の王太子でセシリアの元婚約者のエヴァンだった。

カインのために用意していた出迎えの言葉が、すべて頭の中から飛んでいく。

彼に辛辣な言葉を投げかけられ、蔑ろにされた日々が一気に脳裏によみがえり、セシリアは無意識のうちに一歩後退していた。

(どうして、エヴァン様が……)
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