美しすぎる令嬢は盲目の彼を一途に想う
「ねえ、告白の返事してくれないの?」
「それは……嬉しいけど……でも、まだよく考えた方がいい。目が見えていない僕よりも、君の本当の姿を分かってくれる素敵な男性が現れるかもしれない」

 もう。そんなの目の前にいるじゃない。こういう所も草食系男子の特徴よね。もう少し自信を持ってほしいわ。

「じゃあ、婚約ならどう? いつでも婚約破棄して良いっていう条件付きで」
「そんな簡単に……て、どうせ君の事だから、何を言ってももう無駄なんだろうね」

 私の提案に、呆れた表情で返す彼だけど、少し嬉しそうにしているのを私は見逃さない。

「ふふっ……。じゃあ、私達は今日から婚約者って事ね!」
「それはいいけど、本当に良い人が現れたら、すぐに婚約破棄するんだよ?」
「ええ! だけど貴方にも良い人が現れたら、その時は遠慮なく言ってちょうだい」

 もちろん、今度はそう簡単に手放すつもりはないけど。

「それはないよ。僕から婚約破棄する事は絶対にない」
「あら? そんな事言ってもいいの? もしも急に、あなたの目が見える様になったら大変よ? 『こんなゴリラ女だとは思わなかった! 婚約破棄だ!』とか言いたくなるかもしれないわよ?」
「それもない。君がどんな姿だろうと、僕は君の事を――」

 そこまで言って、アルはハッと口を噤んだ。
 くっ……! 今のは惜しかったわね。

「でも、そうだな。君の姿を一目だけでいいから、見てみたいな」
「ふふっ。見たらきっとびっくりするわよ」
「どうかな? 一応、僕の中で君の姿はイメージ出来ているんだけどね」
「あら、ちょっとどんな姿をしてるのか、言ってみてくれる? 答え合わせをしてあげるわ」
 
 アルは天を仰ぐ様に目を閉じ、優しい笑みを浮かべながらゆっくりと口を開いた。

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