アラ還でも、恋をしていいですか?
“小夜はえらいよ。旦那を亡くして一人で子どもを育てながら料理屋を一人で切り盛りしてるんだからな。おまえみたいな何もできない女とは違う。華もあるしな”
章が先日贈った、という花束とピアスを身に着けた小夜というひとは、確かにきれいな和風美人だった。
“おれが慰めてやりたいよ…いや、小夜にはおれでないと無理だ”
そうのたまう章は、うっとりと鼻の下を伸ばしていたけど。
彼は、自分が今年70になるおじいちゃん、という自覚はあるのだろうか?
確かに、若い頃からモテた。
高身長に凛々しい顔立ち。頭の回転も早く話し上手で女性をうっとりさせる。おまけに一流大学卒のエリートで、一流企業の重役まで務めた。
でも、人は老いる。努力しても衰えてくる。
まして、なんの努力もして来なかった章はその辺りの同年代より、明らかに老けて見えた。白髪だらけで歯はぼろぼろ。シワだらけだし、筋力も衰えて腰が曲がってきてる。それなのに若い頃と同じ格好をして、オシャレだとかダンディと勘違いしてる。
小夜と写った写真は、明らかに祖父と孫にしか見えなかった。
なんだかおかしくて、フフッと笑ってしまう。
だけど。
(おばあちゃんなのは私も一緒……人のことは笑えないわね)
決してのめり込まないでおこう、と自分自身に強く言い聞かせた。