アラ還でも、恋をしていいですか?
「返済期間はまもなくです。返済のあてはありますか?」
敬一くんの指摘に、章は口籠りだんまりを決め込む。いつもそうだ…気に入らないと怒鳴り散らすか、無視するか、黙るか、逃げるか。
「でも、それだけじゃないですよね?」
敬一くんがもう一度目配せすると、葛西さんはアタッシュケースから分厚いファイルを取り出す。
広げた紙はずいぶん古びて変色したものまで…添付された写真は白黒のもある。
「昭和54年5月5日…入籍した日に、あなたは結婚前から関係のあった花園たえさんのお宅に泊まっていた」
あの日、仕事が忙しいから泊まりになる…と。入籍には私一人で市役所にいかされ、章は仕事に行ってそのまま帰って来なかった。
新婚なのに、章は月の半分以上仕事だ付き合いだと不在だった。それはやっぱり…愛人宅に入り浸るためだった。
「その後、あなたは数多くの愛人宅を渡り歩いてましたよね?彼女たちに貢ぐため…月収の半分以上を費やした。幸子さんに渡すのは必要最低限の生活費…時には借金してまで溺れてましたね」
「き、貴様……!」
ダン!と章はテーブルを強く叩いた。
「なんの権利があっておれやこの家のことに口を出す!?そもそも不法侵入だ!警察を……」
「あなたが招き入れたじゃないですか。それに、幸子さんに同意は頂いてます」
ね?と首をかしげられ、思わずうなずいた。
そして、敬一くんは驚きの事実を口にした。