アラ還でも、恋をしていいですか?
「……ぼくの祖父は、Y島の藤野健一です」
「やっぱり…そうだったのね。あなたが健一兄ちゃんのお孫さん…」
「はい…隠すつもりはありませんでしたが……」
敬一くんの発言で、確信を得た。彼が私を気にかけていた理由を。
「健一兄ちゃんに言われたから、私を気にしてくれたのね?」
「違います!確かに最初はそうでした……ぼくがじいちゃん家に来てからは、頼まれて様子を覗いに……でも」
敬一くんは一度顔を俯かせ、テーブルの上に載せた拳を震わせる。
「小1の……学校の体験学習で…野菜を作るというのがありました。その時、手伝いに来てくださった人の中にあなたが…幸子さんがいましたよね」
「ああ…確かにあったわ」
もう20年近くまえ自治会活動に参加して、子ども会の手伝いにも行ってたなと思い返す。子どもがいない私には対応が難しかったけど、健一兄ちゃんのようになるべく明るく親しみやすく、を心がけてた。
「ぼくはさつまいもを担当して……慣れない作業に四苦八苦するぼくを、励ましてくださいました。収穫したさつまいもを焚き火で焼いてくれて…美味しさに感動しましたけど。一番惹かれたのは…幸子さんの優しくあたたかな笑顔でした」
「えっ…」
敬一くんの意外な告白に、頭が真っ白になる。
私の様子を見て誤解したのか、彼は申し訳無さそうな顔になった。
「……すみません、こんな若輩者が…なにを言っているんだ…と。気味悪く思いますよね」
「い、いいえ…そんな…そんなことはないわ。あなたが思い遣りある立派な大人だということは、わかってるもの」
彼が彼自身を否定してほしくはなくて、私は首を横に振った。
すると、それだけなのに敬一くんの表情がぱっと輝いて、私の両手をそっと包み込む。大きくたくましい手に、ドキドキと鼓動が速まった。