捨てられ聖女サアラは第二の人生を謳歌する~幼女になってしまった私がチートな薬師になるまで~
(この人はどうしてわたしを買ってくれたの? わたしになにをのぞんでいるの?)

 十八歳のサアラならまだしも、幼女の姿となってしまった自分が役に立つとは思えない。短くなった身長も手足も、大人だった頃と比べて不便なことばかりだ。せっかく高い金を払って買った女だというのに同情してしまう。
 後悔の多い人生だった。だからこそこうして時間がたっぷりあるうちに人生を振り返っておくのもいいだろう。

(じきに人生のかいそうがひつようになるかもしれないし)

 何故ならサアラを買ったのは血に飢えた獣と評される危険人物だ。買った娘をどう扱うのか、少し考えただけでも怖ろしい想像が浮かんでくる。
 ゆっくりと進む馬車は確実にノースハイム領へと近づいているが、幸い目的地に着くまでまだ猶予はあるだろう。

(きっとさいしょにまちがえたのは――)

 生まれてすぐに母を失ったサアラを育ててくれたのは父方の祖母ソニアだった。母は娘を生んですぐに息を引き取ったらしい。
 祖母は年老いてなお威厳を失わず、淑女として尊敬できる女性だ。教えや言葉は厳しかったけれど、そこには確かな愛情が宿っていた。

(あのころ、わたしはたしかにしあわせだった)
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