彼の指定席
「……からかわないでください」
小さな声でそう言うと、あたしは足早に店長のもとに向かった。
「すみません、おしぼりの予備がないので、取りに行ってきます」
「あぁ、分かった。……なんか、顔赤いけど、どうかした?」
「いえ、なんでもないです」
走った先は、備品が置いている場所なんかじゃなくて、従業員用のトイレ。
トイレに入り鍵をかけると、あたしは思い切り泣いたんだ。
ねぇ、増永さん。
もう、からかったりしないでよ。