イノセント*ハレーション
あたしは、ゴシゴシと袖口で涙を拭い、えいやっと心の中で掛け声をかけて立ち上がった。


「あたしは、あたし。分かってる。だから、君にこれ以上言うことはない」

「雨谷、あのさ...」


ーーピーピーピー。


洗濯機が止まった。

静まり返った。

話さなきゃって思った。

脳が回転して口が動いた。


「干すの手伝ったら日葵のとこ行くよ。だからほら、これをそこのハンガーに干して」

「...分かった」


それからあたしは何事もなかったかのように振る舞い、彼と共に日葵達が待つグラウンドに戻って最後の打ち上げ花火を見た。

グランドフィナーレに相応しい大輪の花が夜空に咲き誇る中、あたしの胸に疼く感情はそれに呼応して激しく泣いていた。


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20×2年10月25日

天気曇り

絆奈と再会して友達として再スタートを切れた。

矢吹くんがあの時の鈴木くんだと分かってびっくりしたけど、ちゃんと改心してくれて良かった。

ここからまた新しい未来の始まり。

って、前向きに行こうと思っていたのに、まだもやもやが消えない。

きっとこれが消える頃には、春になっているだろう。

早く花が咲いてほしい。




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