イノセント*ハレーション
「ったくもぉ...日葵はいっつもなんだから」

「鶴乃さん、そんな怒らないで」


まだ火消しが不十分らしい。

鶴乃さんは移動しながらもぶつぶつと文句を連ねる。


「怒りたくもなるよ。だって今朝だって...」


日葵が寝坊して予定していた電車に乗り遅れて各駅列車に乗車することになり、待ち合わせ時間を3分遅れてしまった、とのこと。

あたしはうんうんといつも以上に相槌を打ち傾聴した。

鶴乃さんの怒りをどうにかこうにか宥めながら噴火を防ぎ、入場ゲートまでの道のりを歩ききった。


それにしても人が多い。

夏休みに入ったから、家族連れ、カップル、あたし達みたいな学生の集団もちらほら見かける。

そんな中でも、あたし達のグループのあたし以外の女性陣...まぁ、日葵と鶴乃さんのことなんだけど、とにかくどちらもそれぞれの魅力を最大限に生かした服装が似合い過ぎていて目移りする余地なんてない。

鶴乃さんの空色のブラウスにレモン色のロングスカートに白のフラットサンダルという上品なコーディネートはさすがだし、

日葵の二の腕のあたりがふわんとなった形の可愛いピンクのブラウスにショートパンツという日葵らしくて可愛いコーディネートもすごく良いと思う。

そんな中にモノトーンのあたしなんて不釣り合いにもほどがあると、我ながらがっかりする。

おばあちゃんには、あたしが4年前に老人会の熱海旅行に付き添いで参加した時の白地のワンピースを勧められたけど、丁重に断った。

あれから身長も体重も対して変わっていないから着れないことはないけど、ワンピースなんてキャラじゃない。

Tシャツにジーパンやカラースキニーくらいがあたしらしい。

それ故に悲惨な目になっても許せる。

そういうのが似合ってしまうあたしの自業自得なのだから。

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