イノセント*ハレーション
「夏海っ!」


夏海ちゃんの後方、あたしの視界の隅からその声の主は駆け寄ってくる。

そして、思いっきり両腕を回して夏海ちゃんを抱き締めた。

夏海ちゃんの両目から涙が次々に溢れて頬を流れる。

お母さんのTシャツに染み込んでいく。


「夏海...もう心配したんだからね」

「ごめんなさい!ママ、ごめんなさ~い!」


泣きじゃくりながらもきちんと思いを伝える夏海ちゃん。

あたしはその姿になんだか胸がいっぱいになった。

きゅうっときゅうっと締め付けられて鼻の奥がツンとする。

あぁ、泣けそう...。

でも、泣けないんだよね。

あたしの視界にはもう1人映り込んでしまっていた。

あたしまで迷子扱いされてはたまるものかと、あたしは先に立ち上がった。


「では、あたしはこれで...」

「すみません。ありがとうございました」


夏海ちゃんが涙目を両腕で必死にゴシゴシしてからあたしを見る。

その顔は...とびきりの笑顔だった。


「凪夏ちゃんありがとう!」

「どういたしまして。これからも家族仲良くね」

「うんっ!」


< 37 / 220 >

この作品をシェア

pagetop