Rain or Shine〜義弟だから諦めたのに、どうしたってあなたを愛してしまう〜

 その時だった。瑞穂のスマホが大音量で鳴り響いたのだ。その音を止めようとして、慌てて通話ボタンを押してスマホを耳に当てる。

「もしもし!」
『なんで居留守を使うわけ?』

 なんて懐かしい声だろう……ずっと聞きたかった声。低くて、それでいて囁くように響く声。涙が出そうになる。

『瑞穂?』
「……い、今忙しいの……だからダメ……」

 必死に言葉を絞り出し、なんとか恵介が帰ってくれるることを祈った。

『それは無理な相談だよ』

 恵介の声が聞こえた途端、庭に面した窓が勢いよく開かれた。瑞穂は突然のことに驚き、大きく目を見開いた。

 先ほどまでモニターに映っていたはずの恵介が、窓から部屋の中へと入ってきたのだ。恵介は口元に笑みを浮かべ、へたへたとしゃがみ込んだ瑞穂を上から見下ろしていた。

「久しぶり」

 実物の恵介を前にして、瑞穂は言葉を失った。
< 8 / 53 >

この作品をシェア

pagetop