エリート警察官の溺愛は甘く切ない
「旦那さん、何の仕事してるんですか?」

「警察官です。」

「へえ。ウチは自衛官なんですよ。」

私は一瞬、息が止まった。


その奥さんの顔が、少し疲れているように見えたから。

「自衛官とか警察官とか、消防官とか。朝の見送りは必ず笑顔でしろって言いますよね。」

「どうしてなんですか?」

「その日、生きて帰って来るか分からないからですよ。」

私はドキッとした。

まさか、圭也さんに限って、そんな事は。

「私の主人も、怪我をして今入院中なんです。嫌ですよね。喧嘩した朝に、仕事中事故に遭うって。」

だから、奥さん暗い顔をしているんだ。


「ごめんなさいね。こんなお話、朝からして。」

「いいえ。貴重なお話、ありがとうございます。」

そう言って、私は部屋の中に入った。

警察官の奥さんって、私が思ったよりも大変かもしれない。

私は、ため息をついた。


その日、生きて帰ってくるか、分からない。

そんな職種の人がいるなんて。

思ってもみなかった。
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