大切なあなた
「ねえママ、運動会来れる?」
「運動会?」
「うん」

いつもの夕食時間。
息子の月がエプロンの端を引っ張りながら、私を見上げる。

そう言えば運動会のお便りが来ていたな。
確か・・・6月最終週の日曜日。
普通この梅雨の時期に運動会なんておかしい気もするけれど、市内にあるドーム球場が借りれる関係で定番化しているらしい。

「月ね、リレーと、綱引きと、玉入れに出るんだよ」
「そう」

去年は年少さんだったから一緒に手を繋いで駆けっこするのが精一杯だったのに、今年はいっぱい出るみたいね。

「ママ、来てくれる?」
「もちろん。美味しいお弁当持っていくわね」
「うん」

ヤッターとピョンピョン跳ねる月がとってもかわいい。
悩んだけれど、この子を産んでよかった。
この子のためにならどんな苦労もいとわない。

ピコン。
メッセージの受信。
あら、仕事用の携帯だ。

『すみません高山です。影近さんの事務所に宿とスケジュールを送ったのですが、やり直してくれと突き返されました。できれば今夜中に荒川主任から電話が欲しいと、影近さんご本人からの伝言なんですが・・・』

はあ?
まず、この内容とメッセージ送る神経がわからない。
普通電話でしょう。私が気づかなかったらどうするつもりなのよ。
それに・・・

「はああ、もうっ」

『わかりました、連絡してみます。今後急ぎの要件は電話をしなさい』
『はい、すみません<(_ _)>』

一緒に送られてきたスタンプを見て怒る力も抜けた。
仕方ない、これが今どきの子なんだろう。
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