婚約者が浮気相手と駆け落ちしました。色々とありましたが幸せなので、今さら戻りたいと言われても困ります。
 その後、サルジュとその女子生徒は親しくなったようで、彼女とも顔を合わせる機会が増えた。
 アメリアという名の、小柄で可愛らしい少女だった。北方に大きな領土を有するレニア伯爵家の令嬢のようだ。あの農地のデータならば、サルジュの研究に大いに役立つだろう。
 そのせいか、それとも気が合うのか。
 研究に夢中になると、兄達の言うことさえ聞き流すサルジュが、アメリアの言葉だけはきちんと聞き、受け入れる。さらに彼女のためにふたりきりで会うことを避けているようで、ちゃんと護衛を連れて歩くようになったのも有難い。
 けれどアメリアもまた、サルジュと同じ向こう側の人間だった。
 彼女が助手として研究を手伝うようになると、ふたりで時間を忘れてしまうことが多くなった。日によっては、朝から閉校の時間まで研究を続けていることもある。
 騎士として鍛えているカイドでさえ、それほど長く集中することはできないのに、休憩もせずに没頭している姿を見ると心配になる。だが声を掛けても返事がないことが多く、かえって邪魔をしては長引くことになると、静かに見守ることにした。
 サルジュがこれほどまで真剣に取り組んでいるのは、この国の未来のためだ。
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