離縁するつもりが、極上御曹司はお見合い妻を逃がさない
困ってしまった私は、それからは黙々と料理を口に運んでいた。

不愛想な人間だと思わせようと考えたのだ。


ところが、料理のおいしさには敵わず、食べた瞬間に笑みがこぼれてしまったり、思わず「おいしい」と漏らしてしまったりするありさまだ。

そのたびにしまったと思うのだけれど、普段は口にできない料亭の味にうならずにはいられない。


「竹内さんは、趣味などありますか?」


定番の質問が来た。


「まったくないんです。仕事に疲れて家に帰るとバタンキューで。家と病院の往復だけで、なんのおもしろみもないんですよ」

「それだけお仕事に力を注いでいるという証ですよね。素晴らしい。看護師さんは体力的にも大変な仕事ですし、よくわかります」

「あ……」


つまらない人間だとアピールしたつもりなのに、そんなふうに返されては困る。

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