特等席〜私だけが知っている彼〜2
もしも、憧れの芸能人とお付き合いしていたらどんな生活になっているのか。想像、ではなく現実に体験している女性がここにいる。

保育士として働く甘織椿芽(あまおりつばめ)は瞳を輝かせながらステージを見つめる。ステージは眩しいくらいのスポットライトで照らされ、椿芽の周りにいる女性たちが歓喜の声を上げている。

「仁(じん)〜!」

「彼方(かなた)〜!」

「亮二(りょうじ)〜!」

「悠里(ゆうり)〜!」

女性たちは皆、口々にステージで歌っている男性たちの名前を呼んでいる。彼らは多くの女性たちの心を虜にする大人気アイドルグループなのだ。

童話に登場する王子様のような衣装を着た男性が姿を見せる。その刹那、椿芽の頬が赤く染まっていく。

「五十鈴くん……!」

椿芽が名前を呼ぶと、ステージで歌っている牧五十鈴(まきいすず)と目が合う。刹那、ふわりと微笑みを向けられた。女性たちの口から悲鳴が上がる。
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