特等席〜私だけが知っている彼〜2
椿芽の心拍数がどんどん高くなっていく。ステージで歌っている五人は、全員世間でイケメンと呼ばれる人たちだ。だが、椿芽の目にはたった一人しか映らない。

椿芽がずっと見つめてしまう五十鈴は、アイドルグループ「Rose」のリーダーで、数々のドラマやバラエティ番組に出演している大人気の芸能人だ。そして、椿芽の恋人でもある。

(アイドルの五十鈴くん……誰よりもかっこいい……!)

椿芽が真っ赤な顔で五十鈴を見ていると、五十鈴が唇に指を当ててキスを送ってくる。また女性たちから悲鳴が上がり、椿芽は胸を高鳴らせつつも少し嫉妬してしまうのだった。

夢のような時間はあっという間に過ぎてしまう。たくさんの曲をRoseは歌い、その中には新曲もあった。そしてアンコールでも三曲歌い、ライブは終了する。

「みんなめっちゃかっこよかった〜!」

「ホントそれ!チケット取れてラッキーだったよ」

そんなことを話しながら、ライブに来ていた人たちは帰っていく。誰もが頬を赤く染めており、それは彼らに心を奪われた証でもあった。
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