Butler and Isla
「ジュリエットお嬢様、大丈夫ですか?」

ノエに心配そうに見つめられ、ジュリエットは我に帰る。すぐ近くにノエのアンバーの瞳があり、ジュリエットの顔は自然と赤く染まっていく。

「先ほどからぼんやりとしておられます。どこか、お体の具合が悪いのですか?ブランケットをお持ちした方がよろしいでしょうか?」

「ありがとう。でも大丈夫よ、ノエ。強いて言うなら、ペンと紙を用意して貰えるかしら?手紙の返事を書くわ」

承知致しました、と言いノエは紙とペンを取りにジュリエットのそばを離れ、部屋のドアを閉める。それを見届けたジュリエットは、深いため息を吐くのだった。

同じ頃、部屋を出て歩くノエの足取りは重くなっていた。執事たる者、仕えている主を長く待たせてはならない。それは嫌というほど叩き込まれていた。しかしーーー。

「ケイ様に手紙を、書いてほしくない……」

執事らしからぬことを呟き、ノエは怪我などしていないというのに痛みを発する胸を強く押さえた。
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