エリート官僚は政略妻に淫らな純愛を隠せない~離婚予定でしたが、今日から夫婦をはじめます~
邪魔をされたとでも思っているのだろうか。一哉は不服そうに小さな溜息を吐き、スーツからスマホを取り出す。

画面を確認したその途端に嫌そうに顔をしかめたので、澄夏は少し驚いた。

(誰からなんだろう)

気になって見守っていたが、一哉は応答せずにスマホをスーツのポケットに戻してしまった。

「出なくていいの?」
「ああ、仕事関係からなんだけど、こんな時間に対応する必要はない内容なんだ」
「それならいいんだけど」
「ムード壊してごめんな」

一哉は何事も無かったように澄夏の肩を抱き歩き出す。

「早く帰ろうって言ったけど、少し散歩しようか」

彼は美しくライトアップされた通りに目を向けていた。

「うん」

澄夏は笑顔で頷いたものの、先ほどの電話が心にひっかかっていた。

(本当に仕事の相手だったのかな?)

仕事の連絡であんなに迷惑そうにするなんて。普段から熱心に働いている彼の行動としては違和感がある。

だけどせっかく穏やかになった雰囲気を、追及することで壊すのは嫌だった。

澄夏は生まれた疑問を胸にとどめ、美しいイルミネーションを楽しんだ。


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