エリート官僚は政略妻に淫らな純愛を隠せない~離婚予定でしたが、今日から夫婦をはじめます~
隣の夫の様子をうかがうと、彼も真咲に気付いているようで険しい表情を浮かべていた。

しかし止まることはなく、エントランスに真っ直ぐ向かう。

距離が近づくと、真咲もこちらに気付いたようで近づいてきた。

澄夏たちの前で立ち止まると、堂々とした態度で顔には余裕を感じる笑みを浮かべている。

「おかえりなさい」

平然と挨拶してくる彼女に、澄夏は驚き動揺した。

今の一哉は苛立ちを隠さずに表に出している。恐らくあえてなのだろう。

それをずっと同じ仕事をしていた彼女が分からないはずがない。

(分かっていても、平気なの?)

「よかった会えて。メッセージの返信が無いからどうしようかと思っていたんです」

むしろ嬉しそうにしている真咲に面食らう。

「どういうつもりだ?」

澄夏は唖然として声も出ないが、一哉は普段聞かないような低い声で答えた。

「え?」

「昨日妻に無礼な発言をしたと聞いた。」

「……どんな発言ですか?」

ここでようやく真咲の視線が澄夏に向く。美しけれど、暗い光を湛えた瞳で見据えられてドキリとした。

一哉は真咲の視線から澄夏を庇うように立ちはだかり、なお厳しい口調で追及する。
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